
※この記事は、主に中小企業・小規模事業の経営者の方を想定して書いています。
説明は伝わっているのに、なぜ決まらないのか
ここまでで、
「なぜあなたの価値が伝わらないのか」という構造については、
ある程度整理できたはずです。
説明は以前より分かりやすくなった。
言葉も整理されてきた。
何をしている会社なのかも、きちんと伝えている。
それでも…
なぜか行動につながらない。
「いいですね」と言われる。
「分かりやすいですね」とも言われる。
でも、問い合わせは増えない。
最終的に選ばれない。
この段階で、多くの経営者はこう考えます。
- まだ説明が足りないのか
- もっと強く背中を押すべきなのか
- 最後のクロージングが弱いのではないか
この感覚自体は、間違っていません。
なぜなら、経営者は“決めさせる立場”に慣れているからです。
経営者が「クロージングしたくなる」のは当然
現場の経営者は、こうやって成果を出してきました。
- 相手の迷いを感じ取る
- 情報を整理してあげる
- 最後に背中を押す
対面営業では、
これはとても有効なやり方です。
相手との関係性があり、
空気があり、
表情や反応を見ながら調整できる。
だから経営者は、
無意識にこう思ってしまいます。
「最後は、こちらが決めさせないと動かない」
これは経験からくる、正しい感覚です。
でも、そのクロージングをWebに持ち込むと何が起きるか
問題は、
この“正しい感覚”を
そのままWebに持ち込んでしまうことです。
Webサイトでは、
- 相手の表情は見えない
- 関係性もまだない
- 信頼は、これから作られる段階
そんな状態で、
- 今すぐ行動してください
- こちらがベストです
- 比較するなら当社です
と迫ると、
何が起きるでしょうか。
顧客は「選ぶ人」ではなく、
「守る人」になります。
決断する側ではなく、
防御する側に回る。
これが、
“伝わっているのに行動が起きない”
最大の理由です。
行動が起きないのは、説得不足ではない
この状態を見て、
経営者はさらにこう考えがちです。
- もっと説得力が必要なのでは
- 強い言葉が足りないのでは
でも、ここで起きているのは
説得不足ではありません。
顧客が「選ぶ立場」に立てていないのです。
- 理解はしている
- 共感もしている
- 信頼も感じ始めている
それでも、
「私は、どの立場で判断すればいいのか」
が分からない。
だから決められない。
Webでやるべきクロージングは、まったく別物
ここで、はっきり言っておきます。
Web上でやるべきなのは、
決断させるクロージングではありません。
Webで経営者がやるべきことは、
顧客が「判断者として立てる状態」を
きちんと完成させること。
これが、
Webにおけるクロージングです。
- 押すこと
- 急がせること
- 決めさせること
ではありません。
「選ぶ立場」を奪っていないか
多くのWebサイトでは、
善意から、こんなことが起きています。
- 情報を全部並べる
- 選択肢をすべて提示する
- 最後は顧客に委ねる
一見、親切に見えます。
しかし実際には、
顧客をこういう状態に置いています。
「判断してください」
でも
「判断する位置」は示されていない
これは、
選ぶ立場を与えているのではなく、
放り出している状態です。
あなたは、もう「選ばせる側」ではなく「整える側」
ここで、経営者に伝えたいことがあります。
この段階で悩んでいるあなたは、
売ることしか考えていない人ではありません。
- 誠実に仕事をしている
- 情報を隠していない
- 顧客に考える時間を与えたい
ちゃんとやっている側です。
ただし、
Webでは役割が変わります。
経営者は、
- 決めさせる人
ではなく - 決められる状態を整える人
になる必要があります。
“伝わる”は、まだ途中段階
伝わることは大切です。
でも、それはゴールではありません。
- 伝わる
- 理解される
- 共感される
その先に、
「私はこの立場で、これを選ぶ」
という地点があります。
行動が起きないのは、
あなたの説明が足りないからではない。
その地点まで、顧客を連れて行けていないだけです。
まとめ|Webでのクロージングとは何か
- 経営者がクロージングしたくなるのは自然
- ただしWebでは、同じやり方は通用しない
- 押すほど、顧客は防御に回る
- Webの役割は「決断できる状態」を完成させること
ここまでが、
“伝わる”だけでは足りない理由です。
次の章では、
その「判断できない状態」が
どこで生まれているのかを、
構造として解きほぐしていきます。
「伝わっているのに、なぜ行動が起きないのか」
その理由は、経営者の姿勢だけでなく、Webサイトの構造にもあります。
👉 【経営者編9-2|構造編】行動を生む“差別化の本質”とは|なぜ判断は止まってしまうのか
