【基礎編・考え方4】“アート”と“デザイン”は、似ているようでまったく別の仕事です

【基礎編・考え方4】“アート”と“デザイン”は、似ているようでまったく別の仕事です

混同されやすいですが、決定的に違う

アートとデザインは、
よく似た言葉として使われます。

でも仕事として見ると、
この2つは目的も、評価軸も、失敗の定義もまったく違います。

ここが曖昧なまま進むと、
デザインは高確率で失敗します。

目次

定義①|アートは「表現する」仕事

アートの目的は、表現です。

  • 自分が何を感じているか
  • 何を美しいと思うか
  • 何を伝えたいか

答えは、自分の中にある。

見る人がどう感じるかは、
コントロールできなくても成立します。

極端に言えば、
ズレてもいいし、
誤解されてもいい。

それがアートだと思います。

定義②|デザインは「ニーズに応える」仕事

一方で、デザインの目的は明確です。

ニーズに応えること。

  • 何を求められているのか
  • 何に困っているのか
  • 何を不安に思っているのか

答えは、相手の中にある

見る人が迷ったり、
違和感を覚えたり、
気分を損ねた時点で、
デザインは失敗です。

決定的な違いは、成立する条件が違う

ここが、
アートとデザインの決定的な違いです。

  • アート:
    何をどう受け取るかは、見る人に委ねられている
  • デザイン:
    伝わらなければ、成立しない

アートは、
評価や解釈が一つに定まらなくても成立します。

一方デザインは、
伝えるべき相手に、意図が届かなければ失敗です。

なぜデザインは失敗するのか

多くの失敗は、
センスや技術の問題ではありません。

原因は、ほぼ一つ。

ニーズが、最初から共有されていないからです。

よくあるのが、
依頼側が
「なんでもいいです」
「おまかせします」
と言い、

作り手も
そのまま「はい」と受け取ってしまうケースです。

これは自由でも信頼でもなく、
判断が丸投げされたまま、
制作だけが始まっている状態です。

とくにイメージに関しては、
「なんとなくこんな感じ」
「雰囲気はいい感じで」
といった、
判断になっていない言葉が使われがちです。

この状態では、
正解も不正解も存在しません。
あるのは、
あとから出てくる違和感だけです。

結果、作り手の好みや流行、
表現したい世界観が前に出てしまうことが多く、
「何を伝えるデザインなのか」が
「何か違う…」という状態
になってしまうからです。

デザインが失敗するのは、
誰かが悪いからではありません。
決めるべきことが決まらないまま、
仕事が始まってしまうからです。

デザインに必要なのは、センスよりも「確認」です

  • 何を解決するのか
  • 誰のためのものか
  • 何を伝える必要があるのか
  • 目指すゴールはどこか

ここが依頼側・作り手の間で揃っていれば、
デザインはスムーズに進みます。

判断基準が曖昧なまま進むと、修正が必ず増えます

「なんとなく違う」
「好みじゃない」
「もう少しかっこよく」

こうした言葉が出てきた時、
それはセンスの問題ではなく、
ニーズが言葉として共有されていないサインです。

正解が見えない状態で作れば、
迷いと修正が増えるのは当然です。

デザインがうまくいかないパターン

デザインが止まる・荒れる・直され続けるときは、
だいたい同じことが起きています。

① ゴールが決まっていない

  • きれいにしたい
  • 今っぽくしたい
  • なんとなく変えたい

ゴールが曖昧だと、
判断基準が最後まで定まりません。

結果、
「これで合ってる?」が
永遠に終わらなくなります。

② ニーズより「好み」が前に出ている

  • 自分は好き
  • 社内では評判がいい
  • 作っていて楽しい

でも、
お客様のニーズとズレていたら失敗です。

デザインは、
作り手の満足度では評価されません。

③ 「もやっとする違和感」を放置している

  • なんとなく変
  • ちょっと引っかかる
  • 説明できないけど不安

このもやっとする違和感は、
ほぼ確実に
ニーズが共有されていないサインです。

ここを無視すると、
後半で必ず大きな修正になります。

④ 作りながら考えている

  • 作ってみてから判断
  • 出してから方向修正
  • デザインで整理しようとする

これは、
一番失敗しやすい進め方。

考える前に作ると、
デザインが「答え」ではなく
迷いの塊になります。

⑤ デザインに「説明」をさせている

  • 伝わらないから足す
  • 不安だから盛る
  • 説明文でカバーする

これは、
設計が終わっていないサイン。

デザインは、
説明させるものではなく、
一目で伝えるためのものです。

まとめ:デザインがうまくいかないパターン

デザインが失敗するときは、
作り方の問題ではありません。

決めるべきことが、決まっていないだけ。

そしてもう一つ、
ここが一番、見落とされがちです。

デザイナーも、依頼する側も、
ゴールについて話し合っていない。

たとえば経営者は、
「問い合わせが欲しい」
「売上につなげたい」
そう思っているのが当たり前です。

でも、それを
きちんと言葉にして伝えていない。

一方でデザイナーは、
無意識のうちに
会社案内や作品集を作る気分になってしまう。

このズレがある限り、
デザインはどれだけ整えても、
目的地にたどり着きません。

ゴールを決めるのは、
センスの仕事ではありません。
もっと話し合うことが必要です。

まとめ:デザインは、応える仕事

整理すると、こうなります。

  • アート:
    自分の内側を表現する仕事
  • デザイン:
    相手のニーズに応える仕事

デザインが失敗するのは、
センスがないからでも、
努力が足りないからでもありません。

ニーズに応えていないからです。

結果、
どちらも間違っていないのに、
「思っていたのと違う」が生まれます。

ゴールを話し合わないままでは、
デザインは会社案内になり、
成果には届きません。

最後に、私の話を少しだけ…

ここまで書いてきたことは、
理想論でも、精神論でもありません。

私はずっと、
お客様に伝えること
3秒で判断されるWebの厳しさ を、
同時になんとかしようと してきました。

どちらか一方では、
ネットでは通用しないからです。

優しくても、
伝わらなければ見られない。
いいでき でも、
3秒で伝わらなければ離脱される。

だから私が見ていたのは、

  • お客様が迷わないか(理解できるか)
  • 気分を害さないか
  • 気が散らないか
  • 失礼になっていないか
  • そして、3秒で伝わるか

この両立でした。

きれいごとだけでは、数字は動きません。
ただなんとなく作ったら、信頼は生まれません。

「伝える」「3秒で」この2つを同時に満たすこと。
それができてはじめて、
Webサイトのデザインは「仕事」になります。

もし今、
デザインがうまくいかないと感じているなら、
センスを疑う前に、
親切と合理性の両立ができているかを
一度、立ち止まって考えてみてください。

そこが揃ったとき、
デザインは驚くほど良くなります。
そして修正がなくなります。

またネットでは、
「努力した」では評価されません。
伝わったかどうかだけが結果になります。

👉 【基礎編・考え方】の他の記事はこちらです
↓ この違いを理解しないまま作ると、
ホームページの制作は失敗します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次