
※この記事は、主に中小企業・小規模事業の経営者の方を想定して書いています。
全編の【経営者編9|理論編】では、
「伝わっているのに、なぜ行動が起きないのか」という問題を、
経営者の心理とWebの特性の違いから整理しました。
ここまで読んで、
こう感じた経営者も多いと思います。
- うちは何も考えていないわけではない
- 差別化も、意識してきた
- むしろ、他社より丁寧に説明している
それでも、
なぜ“最後の決断”が起きないのか。
この章では、
その原因を
「差別化が足りないから」
「押しが弱いから」
といった精神論ではなく、
構造の問題として見ていきます。
判断が止まる場所は、だいたい決まっている
多くのWebサイトを見ていると、
行動が止まる場所には共通点があります。
それは、
- 情報が少ないから
- 説明が下手だから
ではありません。
むしろ逆です。
情報は十分にあり、説明も丁寧。
にもかかわらず、
判断が止まってしまう。
なぜか。
それは、
情報が「判断のために配置されていない」からです。
- 正しい情報が並んでいる
- できることが網羅されている
- 強みも、実績も書いてある
でも、
「どこを基準に選べばいいのか」が見えない。
この状態では、
お客様は考え続けるしかありません。
差別化が「比較」になった瞬間に、判断は重くなる
差別化という言葉は、
いつの間にか
「他社との違いを並べること」
と誤解されがちです。
- 他社より高品質
- 他社より丁寧
- 他社より実績が多い
しかし、
比較が増えれば増えるほど、
判断は難しくなります。
なぜなら比較は、
「正解探し」になるからです。
正解が分からない状況では、
人は決断しません。
- 間違えたくない
- 後悔したくない
- 失敗したくない
この心理が働き、
結果として
「また検討します」で止まります。
本当の差別化は、選択肢を増やすことではない
行動が生まれているサイトは、
実はとてもシンプルです。
- できることを全部書いていない
- 強みをすべて並べていない
- 万人に向けて語っていない
その代わり、
こういう情報がはっきりしています。
- どんな考え方の人に合うのか
- どういう状況の人が前に進めるのか
- 逆に、今は合わない人は誰か
これは、
売り手の都合で選別しているのではありません。
判断を軽くするための設計です。
差別化とは「軸を一本にすること」
差別化が機能している会社ほど、
語っている内容は少ない。
なぜなら、
「この軸で選んでください」
という一本の線が、
最初から引かれているからです。
- この軸に共感する人は、迷わない
- 合わない人は、無理に残らない
結果として、
行動が起きやすくなる。
これは、
尖っているからではありません。
判断の前提が揃っているだけです。
誠実な経営者ほど、判断を難しくしてしまう
ここで、
経営者にとって少し耳の痛い話をします。
判断が止まっている会社ほど、
実はとても誠実です。
- 情報を隠さない
- デメリットも出したい
- 顧客に考える時間を与えたい
その姿勢自体は、
まったく間違っていません。
ただし、
「全部を並べる」ことと
「判断しやすい」ことは、別です。
誠実さが、
そのまま判断のしやすさにつながるとは限らない。
ここが、
多くの経営者が気づきにくいポイントです。
行動を生む差別化とは「決断しやすさ」の設計
最終的に、
行動が生まれるかどうかは、
- 共感したか
- 感動したか
よりも、
「これでいい」と決められるか
にかかっています。
差別化の本質は、
- 目立つこと
- 尖ること
- 強く主張すること
ではありません。
決断しやすい状態を、先に用意すること。
それが、
Webにおける差別化です。
結局、人は「とても簡単な理由」で決めることも多い
サービスを選ぶとき、
人は最初から感覚だけで決めているわけではありません。
- サービス内容を比べる
- 価格を確認する
- 実績や評判を見る
一通り、ちゃんと考えます。
比較もします。
でも…
最後の決断は、驚くほどシンプルなことも多いのです。
- 家から近い
- すぐ来てくれそう
- 話が早そう
- なんとなく安心できる
高いか安いかよりも、
完璧かどうかよりも、
「今の自分にとって、いちばん楽で確実そうか」
この一点で決めていることがほとんどです。
なぜ、ここまで「スピード」が重視されるのか
背景には、
ネット時代の影響があります。
私たちは日常的に、
- すぐ調べられる
- すぐ比較できる
- すぐ申し込める
そんな環境に慣れています。
その結果、
人の判断基準は少しずつ変わりました。
「じっくり検討する」よりも、
「早く前に進めるかどうか」が
選択の大きな要素になっています。
これは、
せっかちな人が増えたからではありません。
- 忙しい
- 判断することが多い
- 迷うこと自体が負担
そんな日常の中で、
スピード=安心
になっているだけです。
だから、
- 多少高くても、早いほう
- 完璧でなくても、すぐ動いてくれるほう
- 説明が長いより、話が早いほう
こうした選び方が、
ごく自然に起きています。
多くの経営者は、
ここを信じきれません。
「そんな単純な理由で決められるはずがない」
「もっと中身を見ているはずだ」
そう思って、
情報を足し、
説明を重ね、
比較材料を増やしていきます。
しかしその結果、
お客様は「選べない状態」になります。
差別化とは、
情報を増やすことではありません。
「ここなら、早く前に進めそう」
そう思える一つの理由を
はっきり置くこと。
ネット時代において、
それはとても強い差別化になります。
まとめ|差別化は、説得ではなく整理
- 判断が止まるのは、比較が多すぎるから
- 差別化は、違いを増やすことではない
- 軸を一本にすることで、選びやすくなる
ここまでが、
差別化を「構造」で見たときの全体像です。
次にやるべきことは、
この一本の軸を
どこから見つけ、どう整えるか。
それは、
やり方やテクニックの話ではなく、
会社の内側をどう見直すか、という話になります。
前編では、
経営者がWebで「クロージングしたくなる心理」と、
それが行動を止めてしまう理由を整理しました。
👉 読んでない方はこちら【経営者編9-1|思想編】
次回の
👉 【経営者編10】では、「何を基準に整えればいいのか」
「経営者はどこまで考えるべきなのか」を見ていきます。
