
※この記事は、主に中小企業・小規模事業の経営者の方を想定して書いています。
多くの経営者は、
「うちには強みがある」「いい商品・サービスを提供している」
と感じています。
実際、それは間違いではありません。
それでも、
選ばれない・伝わらない・比較されて終わる
という状態が起きます。
原因は、価値が足りないからではなく、
価値が“そのままの形”で外に出てしまっているからです。
私がここで使う「価値の翻訳」とは、
会社の中にある強みや想いを、
お客様が理解し、判断しやすい形に置き換えることを指します。
言葉を飾ることでも、
無理に分かりやすくすることでもありません。
散らばっている魅力を整理し、
一本の軸としてつなぎ直す。
その結果、
「何をやっている会社なのか」
「なぜ選ぶ理由があるのか」
が、自然と伝わる状態をつくること。
この記事では、
その考え方を 地図を描くように 整理していきます。
価値の地図とは何か
多くの会社は、
「強み」「こだわり」「実績」「想い」を
きちんと持っています。
にもかかわらず、
それが伝わらない・選ばれないという状況が起きます。
これは、
努力が足りないからでも、
表現が下手だからでもありません。
単純に、
価値が“散らばったまま”になっているだけです。
「いいところが多い会社」ほど、迷われやすい
経営者と話していると、
こんな言葉をよく聞きます。
- うちは〇〇もできる
- 実は△△も強い
- □□も評価されている
どれも本当です。
どれも、会社の大切な魅力です。
ただし、
全部を同じ熱量で並べてしまうと、
お客様はこう感じます。
結局、この会社は
何が一番得意なんだろう?
選ばれない理由は、
「弱いから」ではなく、
判断しにくいから。
これが、価値が散らばっている状態です。
価値が散らばると、社内でも迷いが生まれる
価値が整理されていないと、
困るのはお客様だけではありません。
社内でも、こんなことが起きます。
- 営業スタッフごとに説明が違う
- Webサイトと営業トークがズレる
- 採用ページと実態が噛み合わない
- 判断基準が毎回ぶれる
つまり、
会社の中でも「軸」が見えなくなる。
結果として、
頑張っているのに、
どこか手応えがない状態が続きます。
価値の地図がある会社は、説明が少ない
一方で、
価値の整理ができている会社は、
説明がとてもシンプルです。
- 話が長くならない
- 何を聞かれても軸が同じ
- Webも営業も採用も、言っていることが揃っている
これは、
特別な表現力があるからではありません。
「どこが中心か」が分かっている
ただそれだけです。
価値の地図とは、
会社の魅力を増やすものではなく、
中心をはっきりさせるための考え方です。
地図がないと、全部が同じ重さになる
地図がない状態では、
すべての価値が「同列」に並びます。
- 技術
- 価格
- 実績
- 人柄
- 想い
どれも大切だからこそ、
優先順位をつけられなくなる。
でもお客様は、
すべてを同時に判断することはできません。
最初に見るのは、
「自分にとって関係があるかどうか」
ただそれだけです。
だからこそ、
最初に伝える軸が必要になります。
一本の軸があると、迷わせなくなる
価値の地図を描くというのは、
「一つに絞れ」という話ではありません。
- 他の魅力を捨てる
- できることを減らす
そういう意味ではありません。
最初に伝える順番を決める
それだけです。
中心となる軸があると、
- まずここを見てほしい
- 合う人にだけ、ちゃんと届けばいい
という判断ができるようになります。
結果として、
問い合わせの質が変わり、
無理な比較や消耗が減っていきます。
「全部いい」は、誰にも刺さらない
これは少し厳しい話ですが、
とても大切なポイントです。
「全部いい会社」は、
誰にとっても決め手がない会社
になりがちです。
逆に、
- この悩みなら、ここ
- この状況なら、ここ
と言い切れる会社は、
比較されにくくなります。
価値の地図は、
自分たちを良く見せるためのものではなく、
合う人と、合わない人を分けるためのもの。
そのほうが、
結果的に選ばれやすくなります。
このあと何を考えていくのか
ここまででお伝えしたのは、
- なぜ価値が散らばるのか
- 散らばると何が起きるのか
- 一本の軸があると、何が変わるのか
という 考え方の整理 です。
次のページでは、
この地図をどう描いていくのか。
- 魅力をどう並べるか
- 何を中心に据えるか
- 何を後ろに回すか
といった
構造と判断の話に進みます。
👉 【経営者編7|構造編】価値の地図の描き方
散らばった魅力を、どう並べ、どう一本の軸につなぐのか。
次の記事では、価値の地図を描くための「構造」を整理します。
