
※この記事は、主に中小企業・小規模事業の経営者の方を想定して書いています。
「経営者編8-1」の続きです。
あなたは、きっとこう思ったことがあるはずです。
- 仕事は手を抜いていない
- お客様にも誠実に向き合っている
- むしろ、かなり頑張っている
それなのに…
初めてのお客様には、
その価値がほとんど伝わらない。
これは能力や努力の問題ではありません。
多くの経営者が、同じ壁にぶつかっています。
「うちは説明すれば分かってもらえるんです」
「一度使ってもらえれば、良さは伝わるんですが…」
この言葉が出てくる時点で、
すでに構造的なズレが起きています。
この記事では、
- なぜ“初めての人”には価値が届かないのか
- なぜ頑張っている会社ほど、伝わりにくくなるのか
- Webサイトで何が起きているのか
この「構造」を、順番にひも解いていきます。
価値が届かない理由①|お客様は「前提」を共有していない
経営者や社内の人間は、
無意識のうちに多くの前提を共有しています。
- 業界の常識
- 商品・サービスの背景
- これまでの努力や工夫
- なぜそのやり方に至ったか
でも、初めて訪れたお客様は、それを一切知りません。
それなのに多くのサイトでは、
- 結論から説明する
- 専門用語を当たり前に使う
- 比較される前提で話してしまう
結果として、
お客様はこう感じます。
「悪くなさそうだけど、よく分からない」
「他と何が違うのか判断できない」
ここで離脱されます。
価値が届かない理由②|「強み」が説明されていない
よくある勘違いがあります。
強みは、書かなくても伝わる。
…いいえ、伝わりません。
なぜなら、
- あなたにとっての「当たり前」は
- お客様にとっての「判断材料」だからです。
例えば、
- 丁寧なヒアリング
- トラブルを想定した事前対応
- 納品後のフォロー
- 無理な提案をしない姿勢
これらは、
言語化しなければ存在しないのと同じです。
しかも厄介なのは、
頑張っている会社ほど、こう思ってしまうこと。
「そんなの、やって当たり前ですよね?」
この瞬間に、
価値は沈黙します。
価値が届かない理由③|いきなり「選ばせよう」としている
多くのWebサイトは、
初対面なのに、いきなりこう迫ります。
- お問い合わせはこちら
- 比較してください
- 他社との違いは〇〇です
でも、考えてみてください。
初めて会った人に、
いきなり「信頼してください」と言われて、
信頼できるでしょうか。
本来、必要なのは順番です。
- 理解できる
- 共感できる
- 安心できる
- 比較できる
- 選べる
この順番を飛ばすと、
どんなに内容が良くても、価値は届きません。
ここでやっと「物語」が生きてくる
誤解しないでほしいのですが、
私は「物語が万能だ」とは思っていません。
ただし…
構造が整ったあとなら、物語は強力な武器になります。
物語の役割は、
- 前提を共有する
- 考え方の背景を伝える
- 人となりを感じさせる
つまり、
「なぜ、そうしているのか」
を、自然に理解してもらうためのものです。
だから、
- 創業の話
- 失敗の話
- 遠回りした話
これらは、
信頼を補強するために使うと、初めて意味を持ちます。
「一生懸命頑張っています」も、実は使っていい
ここで、少し意外な話をします。
実は、
「一生懸命やっています」
という言葉も、
構造が整っていれば、悪くありません。
ただし条件があります。
- 抽象論で終わらせない
- 行動レベルまで落とす
- お客様視点で語る
例えば、
❌「一生懸命やっています」
ではなく、
✅「初めての方が迷わないように、
お問い合わせ前の段階で、
ここまで情報を開示しています」
このように、
努力を行動に翻訳することが重要です。
デメリットが書かれていないと、価値は逆に疑われる
初めて訪れたお客様は、
メリットよりも先に 「不安がないか」 を探しています。
それなのに、
良いことだけが並んでいて、
デメリットや注意点が一切書かれていないと、
内容がどれだけ立派でも、こう感じられてしまいます。
「都合のいいことだけ書いていないだろうか」
「自分に合わないケースは隠しているのでは?」
これは、
正直さや誠意の問題ではありません。
判断材料が欠けている、という構造の問題です。
初めての人にとっては、
- 向いていないケース
- 合わない人
- 注意すべき点
これらも含めて初めて、
「自分は検討していいのか」が判断できます。
デメリットを書かないことで起きているのは、
価値の低下ではなく、
判断不能による停止です。
結果として、
「よさそうだけど、決めきれない」
という状態で、ページを閉じられてしまいます。
問題は「伝えていないこと」ではない
ここまで読んで、
「もっと説明しなきゃダメなのか」と思った方へ。
違います。
問題は、
伝えていない量ではなく、
伝える順番と構造です。
- 何を
- どのタイミングで
- 誰の視点で
これがズレると、
どんなに良い内容でも、届きません。
まとめ|価値が届かないのは、能力不足ではない
初めてのお客様に価値が届かないのは、
- あなたの努力が足りないからでも
- センスがないからでも
- 時代遅れだからでもありません。
ただ、
構造が整っていないだけです。
そしてこの構造は、
才能ではなく、整理すれば誰でも直せます。
この記事は、
👉 「経営者編8|理解編」の
続きとして読んでいただくと、
構造のズレがより明確になります。
次の記事、
👉 「経営者編9」は、“伝わる”だけでは足りない理由と、
行動を生むために必要な「差別化の本質」について
掘り下げていきます。
