
※この記事は、主に中小企業・小規模事業の経営者の方を想定して書いています。
前編の【経営者編10|実践編】では、
価値は「見つけるもの」ではなく、
向き合い、言語化した瞬間から立ち上がるものだと整理しました。
ただ、ここで止まってしまう会社も少なくありません。
- 言葉にはした
- コンセプトも決めた
- サイトも整えた
それでも、
本当にこれで伝わっているのか
本当に価値として機能しているのか
という不安が残る。
理由は単純です。
価値は、言語化しただけでは完成しないから。
価値は、
伝えられ、受け取られ、
行動として返ってきたときに、
はじめて「仕事」になります。
ブランドは「声を聴くところ」から立ち上がる
ブランディングというと、
何かを作り込む作業だと思われがちです。
でも実際は、その逆です。
価値は、すでに現場で起きています。
- なぜ選ばれたのか
- どこで安心されたのか
- 何が決め手になったのか
そのヒントは、
お客様の声の中にあります。
そして同じくらい大切なのが、
そのお客様の一番近くにいるスタッフの声です。
- どこで質問が止まるのか
- どこで納得するのか
- どこで不安になるのか
ブランドは、
会議室ではなく、
日常のやりとりの中から立ち上がるものです。
お客様を、もっと信じていい
「お客様の声を聴く」と言うと、
不安になる経営者もいます。
- ひどいことを言われたらどうする
- 無理な要望ばかり出てきたら困る
確かに、そういう人はいます。
でも、それはごく一部です。
ネットの世界でも、
現実の現場でも、
ほとんどのお客様は誠実です。
- 静かに選び
- 静かに使い
- 静かに離れていく
だからこそ、
声を聴かないと、何も見えない。
声を聴くとは、
全員の意見を採用することではありません。
傾向を拾うことです。
「伝えた」と「伝わった」は、まったく違う
ここで、はっきりさせておきたいことがあります。
- 表現した
- 伝えた
それと、
- 伝わった
は、まったく別です。
仕事としてのブランディングでは、
「伝わったかどうか」しか意味を持ちません。
その判断は、
感覚ではなく、行動で行います。
価値が伝わったかを確かめる唯一の方法
価値が伝わったかどうかは、
次のような変化でしか分かりません。
- 問い合わせが増えたか
- 質が変わったか
- 判断が早くなったか
- 比較の話が減ったか
これらはすべて、
お客様の行動です。
「いいですね」と言われたかどうかではない。
「感動しました」と言われたかどうかでもない。
行動が変わったかどうか。
それが、検証です。
CVは「評価」ではなく「対話の結果」
CV(問い合わせ・申込み)という数字は、
評価や成果のためだけのものではありません。
CVは、
お客様との対話の結果です。
- どこで反応したのか
- どこで迷ったのか
- どこで決断したのか
数字は、
価値が伝わった場所と、
伝わらなかった場所を教えてくれます。
だから、
- 数字が出ない=失敗
- ではありません。
調整のヒントが出ただけです。
価値は「検証して育てる」もの
ここまでくると、
ブランディングの正体が見えてきます。
ブランディングとは、
- 一度決めて終わり
- 完成形を作る
ものではありません。
仮説 → 伝達 → 行動 → 検証 → 修正
このサイクルを、
丁寧に回し続けること。
価値は、
検証されることで、
少しずつ精度を上げていきます。
経営者が見るべきなのは「派手さ」ではない
ここで、経営者に伝えたいことがあります。
- 派手な表現
- キャッチーな言葉
- 流行のデザイン
それらが悪いわけではありません。
でも、
何も起きていないなら、それは失敗です。
逆に、
- 地味でも
- 分かりやすく
- 判断が早くなっている
なら、
それは成功です。
仕事としてのブランディングは、
結果でしか評価できません。
なぜ経営者は、声を聴いているつもりで聴けないのか
お客様の声を聴きましょう。
スタッフの声を聴きましょう。
これは、よく言われることです。
でも実際には、
経営者ほど、声をそのまま聴くのが難しい立場でもあります。
経営者は、常に判断する側です。
決める側であり、まとめる側です。
そのため、無意識のうちに
「結論につながる声」
「自分の考えを補強する声」
を探してしまいます。
すると、こうしたことが起きます。
- お客様の声を、都合よく解釈する
- スタッフの違和感を「現場の愚痴」として流す
- 早く答えを出そうとして、途中で話を切る
本人に悪気はありません。
でもこれでは、改善は起きません。
なぜなら、
価値や課題は、
すぐに結論になる形では出てこないからです。
- 言葉にならない不満
- 説明しきれない違和感
- 何度も出てくる小さな質問
こうしたものの中にこそ、
改善のヒントがあります。
お客様の声を聴くとは、
要望を集めることではありません。
スタッフの声を聴くとは、
意見を採用することでもありません。
判断を止めて、観察することです。
経営者がやるべきなのは、
- 正解を出すこと
ではなく - 声が集まる“余白”をつくること。
その余白がない限り、
価値も、改善も、
同じところを回り続けます。
まとめ:価値は、現場と数字が育ててくれる
- 価値は、すでに現場で起きている
- お客様とスタッフの声にヒントがある
- 伝えたかではなく、伝わったかを見る
- 行動で検証し、修正を重ねる
ここまでが、実践編です。
価値は、
誰かが与えてくれるものでも、
机上で完成するものでもありません。
現場と数字が、静かに育てていくものです。
これで、
【経営者編10】は完結です。
理解編から始まり、
実践を理解し、
現実の行動と検証に落とす。
ここまで読めた経営者なら、
もう「なんとなく」のブランディングには戻れません。
経営者編は、ここで一区切りです
経営者編では、
思想 → 構造 → 理解 → 実践
という流れで、
「なぜ伝わらないのか」「どうすれば行動が起きるのか」を整理してきました。
振り返りたい方は、こちらのまとめページをご覧ください。
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