
「ちゃんと伝えたはずなのに、伝わっていない」
仕事をしていると、こんな場面に何度も出会います。
時間をかけて考えた。
言葉も選んだ。
デザインも整えた。
それなのに、
- 問い合わせが来ない
- 反応がない
- 思っていた 受け取られ方と違う
これは、努力不足の問題ではありません。
多くの場合、この段階を混同しているだけです。
表現する、とは何か
「表現する」という言葉は、とても都合がいい言葉です。
想いを込めた。
好きな世界観を出した。
自分たちらしさを表した。
そう言われると、
それ以上、何も言えなくなってしまう。
でも実務の現場で見ていると、
「表現する」という言葉の中に、
考えることを放棄してしまっているケースが少なくありません。
相手が誰か。
どんな状況で見るのか。
何を知りたくて、どこで迷うのか。
そうしたことを深く考えないまま、
自分が言いたいことを、
そのまま外に出しているだけ。
それでも「表現した」と言えてしまう。
本来、表現は自由な行為です。
制限されるものでも、正解があるものでもありません。
ただし仕事の場では、
相手の存在をまったく考えずに行えば、
それはただの独り言になります。
表現そのものが悪いわけではありません。
でも、
表現した = 伝えた
表現した = 伝わる
と考えてしまうと、
ここで止まってしまいます。
「表現する」は、
あくまで自分側の行為。
相手がどう受け取ったかは、
この時点では、まだ何も分かっていません。
つまり、
表現する = 自分起点
です。
伝える、とは何か
一方で、「伝える」は少し違います。
- 相手が理解できる前提に立つ
- 言葉を整理する
- 順番を考える
- 余計な情報を削る
ここでは、
自分が言いたいことよりも
相手がどう受け取るかが基準になります。
伝える = 相手起点
だからです。
表現しただけでは、
伝えたことにはなりません。
だから、簡単ではありません。
でも、その分だけ、
とても誠実で、優しい行為だと思います。
でも「伝える」ことは、
実際の会話では、正直に言ってとても難しい行為です。
相手の反応を見ながら話せるとはいえ、
そこまで細かく配慮しきれないことが多いです。
言い直したり、補足したりしながら、
その場で調整していくしかありません。
でも、
Webや紙媒体の言葉は違います。
書いた言葉は、
あとから補足することができない。
相手の表情を見て、言い換えることもできない。
だからこそ、
書く言葉には、
会話以上の配慮が必要だと考えています。
誰が読むのか。
どこで迷うのか。
どんな前提で考えているのか。
そこまで想像して、
初めて「伝える」に近づきます。
「伝えた」と「伝わった」は別物
ここが、一番混同されやすいところです。
- 書いた
- 説明した
- 言った
それで終わってしまうと、
「伝えたつもり」になります。
でも、
- 相手が理解できたか
- 判断できたか
- 行動できたか
ここまでいって、
初めて 「伝わった」 と言えます。
伝わったかどうかは、
相手の反応でしか測れません。
なぜ「伝わったか」を確認しないのか
実務で見ていると、
「伝わったか」を確認しない理由はシンプルで、
多くの場合…
- 忙しいから
- 余裕がないから
という以前に、
そこまで考えていないことがほとんどです。
Webサイトや紙媒体を制作する場合でも、
表現した。
言葉を書いた。
一通り説明もした。
それで、
「もう十分だろう」と
無意識に区切りをつけてしまいます。
でも実際には、
ここを確認しないことで、
- 手戻りが増える
- 誤解が広がる
- 伝え直しが何度も発生する
という、
もっと大きなコストがかかっています。
仕事として必要なのは、どこか
整理すると、こうなります。
- 表現する → 大切
- 伝える → 必須
- 伝わったか → 仕事の成果
仕事として成果を出すなら、
「伝えた」では終われません。
「伝わったか」まで責任を持つ
ここが、プロの領域です。
Webや紙媒体の場合は、
「伝わったか」を確認する手段があります。
それが、問い合わせや購入などの
行動(CV)です。
反応がない、迷われている、途中で離脱している。
それは「表現が悪い」のではなく、
どこかで伝わっていないというサインでもあります。
多くの人は「言ってみた」で止まっている
実務で見ていると、
ほとんどの方が、
表現する(言ってみた)
ところで止まっています。
きれいな言葉を書いた。
想いも込めた。
世界観も表現した。
でも、その先の
「どう受け取られたか」までは
確認していない。
ネットの中は「メディア」ではなく「お店」「会社」
特にネットの中では、
この問題が起きやすくなります。
雑誌や広告と違って、
ホームページやネットショップは、
お店であり、会社そのものです。
本来なら、
- 来てくださった方に
- 話しかけて
- 状況を見て
- 案内する
つまり、接客が必要な場所。
それなのに実際には、
言葉を投げて
「あとは受け取ってください」
という状態になっているケースが
とても多いと感じています。
表現と接客は、別のもの
それは、
表現ではあっても、
接客にはなっていません。
ネットの中でも、
- 相手の立場を想像して
- 迷いそうなところを先回りして
- 判断しやすく整える
ここまでして、
初めて「伝わった」に近づきます。
まとめ:次につながる話
表現することは、悪くありません。
でも、仕事として成果を出すなら、
表現する ⇒ 伝える ⇒ 伝わったか
この3段階を、
きちんと分けて考える必要があります。
この違いは、
キャッチコピーや最初の一言に
はっきり表れます。
次の記事では、
なぜ「いい言葉を書いたのに伝わらないのか」を、
キャッチコピーの視点から整理していきます。
👉 【基礎編・考え方】の次の記事はこちらがおすすめです
- 3. キャッチコピーは接客(仕組みの入口)
- 4. アートとデザイン(役割の違い)
👉 【基礎編・考え方】の前提としてこちらの記事もおすすめです
- 1. 顧客満足は仕組み(前提として)
