
「インナーブランディング」という言葉を聞くと、
なんだか堅い理屈や大企業の話に思えるかもしれません。
でも、本当はそうじゃありません。
中小企業では、インナーブランディングとアウターブランディングは分けて考えられない
一般的に語られる
“インナーブランディング”や“アウターブランディング”の概念は、
多くの場合、大企業を前提として整理されています。
大企業では、
- 組織が階層化されている
- 役割が分業されている
- 社内向け施策と、社外向け施策を分けて設計できる
といった前提があり、
その中で
「社内に向けたブランドづくり(インナー)」
「社外に向けたブランド発信(アウター)」
を切り分けて考えることが可能です。
しかし、中小企業では事情がまったく異なります。
中小企業では、
- 経営者の考え方が、そのまま会社の姿勢になる
- 社員数が少なく、価値観は日常会話の中で共有される
- 現場での対応や判断が、直接お客様の印象につながる
という状態が当たり前に起きています。
このような環境では、
社内で起きていること(インナー)と、
社外に伝わる印象(アウター)は、
そもそも分かれて存在していません。
電話対応の一言、
メールの書き方、
現場でのふるまい、
経営者の判断や態度。
これらすべてが同時に
「社内の文化」であり
「社外から見たブランド」になっています。
そのため、中小企業が
大企業と同じように
- まずインナーブランディングを設計し
- 次にアウターブランディングを整える
という手順を踏もうとすると、
現実とのズレが生じやすくなります。
本来は同時に起きているものを、
無理に分けて考えてしまうことで、
- 言葉と行動がちぐはぐになる
- サイトと現場の印象が一致しない
- 「ちゃんとしているはずなのに伝わらない」
といった状態が生まれてしまうのです。
このページでは、
こうした中小企業の現実を踏まえた上で、
ブランドは、特別な施策ではなく、
日常の中にすでに存在しているもの
という視点から、
インナーブランディングを考えていきます。
ブランドは、特別なものじゃない
本来、ブランドとは
“その人・会社が、誰かの心に残る意味”
のことです。
これは
- ロゴの色
- おしゃれな言葉
- 派手なコピー
ではありません。
日常の中にすでにあるブランド
あなたがふと誰かを思い出すとき、
- 「あの人はちゃんと約束を守る」
- 「この会社は丁寧に対応してくれる」
- 「このお店はいつも安心できる」
そんな感覚の蓄積が、すでに“ブランド”です。
これは会社だけじゃなく、
- 友人
- 先生
- 店員さん
- 家族
に対しても同じです。
つまり
ブランドは、
特別なものではなく、
身近な“信頼と意味づけ”です。
会社の内側にもブランドがある
会社の中にも同じようなことが起きています。
- 社員が安心して話せる雰囲気
- お客様と同じ価値観で動ける組織
- 「うちの仕事ってこういう意味がある」と感じられる文化
これも、すでにインナーブランディングです。
だからインナーブランディングはこう考える
インナーブランディングは、
“価値を社内で共有し、意味として感じられる状態をつくること”
です。
これは単に
スローガンを刷り込むことでも、
スキルを詰め込むことでもありません。
本当に大事なのは、
- 社員が価値を言語化できること
- 社内で体現できていること
- 日常の行動に価値が映ること
こうした土台です。
結局、ブランドは“関係性”
外向けのブランドがあるように、
内向けのブランド(インナー)は
- 価値を共有できる関係
- 迷いが少ない判断
- 相手を信頼できる状態
をつくります。
これはロジックでも、装飾でもなく、
人と人の関係性そのものです。
アウターブランディングとは何か -中小企業では「外」と「内」は分かれていない
一般的には、
アウターブランディングとは
お客様や社会に向けて、価値やイメージを伝える活動を指します。
- ホームページ
- ロゴやデザイン
- キャッチコピー
- 広告やSNS
こうした外向きの発信が、
アウターブランディングだと説明されることが多いです。
これは間違いではありません。
ただし、中小企業の場合、
この考え方をそのまま当てはめると、
少し無理が出てきます。
中小企業では「外」だけを作ることができない
大企業であれば、
- 社内で価値を定義し
- それを外向けに設計し
- 組織として一貫して発信する
という分業が可能です。
一方、中小企業では、
- 社長の考え方
- 社員の日常の対応
- 電話やメールの一言
- 現場でのふるまい
これらすべてが、
そのまま外から見たブランドになります。
つまり、
アウターブランディングは、
内側の状態がそのままにじみ出た結果
であることがほとんどです。
インナーが整っていないと、アウターは崩れる
見た目だけ整えたとしても、
- 社内で価値が共有されていない
- 判断基準がバラバラ
- 現場の言葉とサイトの言葉が違う
こうした状態では、
アウターブランディングはすぐに破綻します。
お客様はとても敏感で、
- なんとなく違和感がある
- 言っていることと、やっていることが違う
と感じた瞬間に、
信頼は静かに下がっていきます。
比較すると、こう見えてくる
- インナーブランディング
→ 価値を内側で共有し、判断や行動をそろえること - アウターブランディング
→ その内側の状態が、外からどう見えるか
中小企業にとっては、
どちらか一方を先にやるものではなく、
インナーとアウターは、
同時に起きている同じ現象の裏表
と考えた方が、現実に近いと思います。
だから、順番が大切になる
外に向けて何かを発信するときは、
必ず自分たちに問いかけてみてください。
- この言葉は、社内でも使っているか
- 現場の行動と、矛盾していないか
- 無理をして背伸びしていないか
ここがそろっていれば、
アウターブランディングは
自然と信頼につながる発信になります。
まとめ
インナーブランディングとは、
- 特別な技術ではなく
- 日常の価値共有
- 信頼と意味づけの状態
です。
そしてその感覚は、
あなたが普段の生活の中で
自然に感じているものと同じです。
※ 「インナーブランディング=難しい理屈」
というイメージがあります。でも、私はずっと前から
身の回りにある「意味づけ」や「信頼の蓄積」を
“ブランド”として感じてきました。だからこそ、
ブランドは特別でも難解でもなく、
まず身近なところにあるということを伝えたいのです。
(執筆者:ケイ)
